小児の近視

日本近視学会監修による近視予防サイトです。

https://kinshi-yobou.com/

近視とは眼に入る光が網膜の手前で結像する状態です。
裸眼で近くは見えますが、遠くは焦点が合わずぼやけて見えます。

こちらのイラストのように、調節(目のピント合わせ)をしない状態で遠くからの光が網膜に結像していれば正視といいます。
この場合は遠くが良く見えます。

また、真の近視ではなく、一過性に近視のように見える状態になることがあります。
これは、水晶体の厚みを調節する毛様体筋が過度に緊張した状態で、水晶体が厚くなって網膜より前に焦点を結ぶので、偽(いわゆる仮性)近視とも呼ばれます。

大きく分けると、遺伝因子環境因子があります。

眼鏡での矯正ができないくらいの強い近視には、遺伝的な影響が大きい事が知られています。
両親あるいは片親が近視の子供で近視の発生率が高い報告や、弱度近視の遺伝子も発見されています。

近視になるかならないかは、遺伝が重要な因子である一方、環境因子も関連すると考えられています。

環境因子としては、従来から近業(近くを見る作業)が考えられていました。
最近では生活スタイルの変化から、近業の様式が変わり、学童・生徒によるパソコンやスマートフォンの長時間の使用が問題視され始めています。

〇近視になるとメガネが必要でしょうか?治す事はできませんか?

一般的には教室の後ろの席から黒板の字を見るためには両眼で0.7以上必要と考えられます。0.3以下ですと、一番前の席からでも見えません。
特に高学年では黒板の字も小さくなりメガネが必要になる機会が増えると思われます。

近視は眼球の奥行(眼軸)が長いことが原因ですので、これを縮めることはできず、治す事はできません。外科的な近視矯正手術(LASIKなど)で裸眼視力を向上させる事はできますが、小児には適応はありません。


ただし、偽(いわゆる仮性)近視に関しては、緊張によって一時的に起こっているだけですので、取り除くことが可能です。

〇眼鏡を作る時に、目薬を使ってより詳しい検査が必要と言われました。どうしてですか?

特に10歳未満のお子様の眼は調節力(ピントを合わせる力)が強いため、調節力が原因で近視が通常よりも強く測定されている場合があります。
その場合は調節力をとる点眼液を使用する等、正確な屈折を調べて眼鏡を作成する必要があります。

当院ではサイプレジン点眼液を用いての精密な眼鏡処方を行います。


点眼液の効果が出るまでに1時間程度かかりますので、通常よりは時間のかかる検査になります。
原則的に、予約で行わせていただきます。


目薬をさすとおこる目の変化
調節できないようになっているため、物を見ようとしてもピントが合わせにくくなり、ぼやけます。特に近くが見にくくなり、老眼のようになります。(調節麻痺作用)
瞳孔(ひとみ)が大きくなり、光にあたるとまぶしく感じます。(散瞳作用)

※個人差がありますが調節麻痺作用は3~4時間後より回復に向かい、10~24時間後には元に戻ります。散瞳作用は8~24時間後より回復に向かい、2~3日後には元に戻ります。

保育園、幼稚園や小学校をお休みする必要はありませんが、大切なご予定の直前は避けたほうが良いかもしれません。

度数の合っていない眼鏡を装用することが目の負担になりますので、眼科で精査をしてから装用を開始することをお勧めします。

〇近視が進行するとなぜ悪いのでしょうか?

近視は、メガネなどで矯正すれば視力が出るものとして、これまであまり問題視されませんでした。
しかし、近視が将来の目の病気の罹患率に与える影響が大きい事が分かりました。

以下は近視度数と眼疾患のオッズ比(罹りやすさ)です。

白内障緑内障周辺部網膜変性網膜剥離近視性黄斑症
弱度近視
(-1 to -3D)
2倍  4倍  6倍3倍2倍
中等度近視
(-3 to -6D)
3倍4倍18倍9倍10倍
強度近視
(>-6D)
5倍14倍40倍22倍41倍
                                Flitcroft. Prog Retin Eye Res. 2012参照

このように、近視がある方が、色々な病気の罹患率が高まることが分かります。

子供たちが生涯にわたり、良好な視力を維持するためには、小児期に近視の発症と進行を予防することが大切と言えます。

子供たちが生涯にわたり、良好な視力を維持するためには、小児期に近視の発症と進行を予防する事が大切と言えます。

近視進行抑制には以下の2種類があります。

 (1)日常生活を見直す事で近視を進みづらくする工夫

 (2)その他の治療(当院で可能な治療と、扱っていない治療があります)

今からこれらについて説明します。

 ① タブレットは30cm以上離してみる
 ② 30分に一回は20秒以上遠くをみる
 ③ 2時間程度屋外活動をする

普段の生活の中で見直せること

視距離を離す事、近くを見る時間を減らす事が大切です。

両親ともに近視でも、屋外活動が増えると近視を減らせます。

① 低濃度アトロピン点眼(当院でも可能)

参考文献: Chia A et al. Atropine for the treatment of childhood myopia; safety and efficacy of 0.5%, 0.1%, and 0.01% doses (Atropine for the Treatment of Myopia 2).

アトロピンは、瞳孔を開く作用やピント調節を麻痺させる効果を持ち、以前から近視進行を遅らせる作用がある事は知られていました。

しかし、副作用が強いため治療薬としては使われてきませんでしたが、近年は薄めたアトロピンが比較的安全に使われるようになりました。

※近視進行を抑制する治療であり、近視進行を完全に止めたり治す事はできません。 

【方法】寝る前に低濃度アトロピン点眼を両眼に1滴点眼します。

【適応】最近視力が急激に落ちている方、近視が進行しそうな方
    軽度から中程度までの近視の方(2年以上の継続をお勧めします)

【費用】※自費診療のため、保険診療と同日に行う事はできません。


●初回      低濃度アトロピン点眼液1本+検査・診察代 4,000円(税込) 
●1か月後    低濃度アトロピン点眼液3本+検査・診察代 5,500円(税込)
●その後3か月毎 低濃度アトロピン点眼液3本+検査・診察代 5,500円(税込)

当院では自家調整した点眼をお渡ししています。
最初は1本お渡しして、1か月後に視力検査と診察をします。
その後は3本ずつお渡しして、3か月に一度定期検診を行います。

②オルソケラトロジー(取り扱いなし)

寝る前につけて、昼間は裸眼で過ごすハードコンタクトレンズです。
角膜を平らに変形する事で近視を調整します。
2年間の使用で32%~63%の近視抑制効果が確認されています。

【適応】-4D程度の近視、-1.5D程度の乱視まで

自費診療ですが、当院には取り扱いがありません。


③多焦点コンタクトレンズ(当院でも可能)

いわゆる遠近両用のソフトコンタクトレンズとして使用されているレンズです。
近年、オルソケラトロジーに匹敵する近視進行抑制効果が示されはじめています。

【適応】-4D以上でも可能
    自分でコンタクトレンズの着脱ができる年齢

【費用】当院でも一箱(32枚入り)3,190円(税込)で販売しています。


レッドライト療法: 一部の施設のみ
DIMSレンズ:    国内未発売
サプリメント(クロセチン)
バイオレットライト透過眼鏡   など